2018
1
Jul

写真雑記

緑の砂漠

アイキャッチ画像撮影:DJI Mavic Pro Platinum

日本は国土に占める林野率が66%、国土のおよそ2/3が森林に覆われていることになります。
一見して、この数値は森林が豊かであるかのように見えるものではありますが、実際は全森林のうち”人工林”の占める率が41%で、原生的な天然林はほんの10%強しかない、と言われています。

タイトルとした”緑の砂漠”という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
人工林は材木として出荷することを目的としており、その品質のために真っ直ぐ、長く育てる必要があります。このため、わざと密集させて植えて、10年、20年と次第に育ってきたところで間伐を行なっていくのが通常です。
が、昨今報道などでも流れる通り、林業に就く人工は減少の一途を辿り、山林の所有者も高齢化が進んで体力的に維持が難しくなったり亡くなられてしまったりで、このような手入れができない林が増えてしまっています。
こうなると、密に植わったままの人工林はそのまま大きくなり一層過密な状態に、そして自ら繁茂させた葉が太陽光を遮ってしまい、下草などの下層植物が全て枯れ、土壌がむき出しの状態になってしまいます。これが”緑の砂漠”の状態で、遠目には緑豊かなように見えているのに生物多様性の面から見れば貧しく、そして風雨による土壌侵食が盛んになってしまい、土砂災害の頻発や保守力の低下など様々な問題を引き起こすのです。
熊やイノシシなどの野生生物が人里に降りてくることが多くなったのも、緑の砂漠化によって下層植物が減る→野生動物の食料減に繋がっているのが一つの要因とされています。

原生林には原生林のオーラがあって、木々の形や多様性に富み生命体として恐ろしいまでの強さや美しさを感じますが、一方で人工林にも規則性の美、と言いますか、韻律やリズムのようなものを感じることがあって、これはこれで日本独特の景色として私自身はとても好きです。アイキャッチ画像に使った林も、木々の間隔に独特の間があって、音符のようだな?と思いながら撮影していました。
都市部にすみ、このような問題があることを知りつつ写真などノンビリと撮っている側としては呑気なものですが、にわかには”砂漠化”しているなどとは信じられない人工の森・・いわば今までは造られてきた自然が、この先10年、20年、そして自分が生きている間にどのように変わっていくのか、あるいは変わらないのか、は、写真を”記録”としてつかっていきたいテーマの一つではあります。

 

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。